インバウンド読了 約10分

山梨のインバウンド集客。
河口湖と甲府で打つ手が違う理由

執筆:木本 一心(ホマレグラフ株式会社 代表)出典 7件を記事の最後に掲載
新倉山浅間公園の五重塔と富士山

河口湖の駅前や富士吉田の商店街で、外国人観光客の多さに驚いた方も多いのではないでしょうか。一方で「うちの店には、あまり来ない」と感じている方もいるはずです。この記事では、観光庁や山梨県の統計をもとに、山梨に来る外国人観光客の姿を順に整理し、お店の場所ごとにできることを考えます。山梨のインバウンドは、どこでも同じなのでしょうか。

01山梨に来る外国人は、どれくらい?

まず、山梨にどれくらいの外国人観光客が来ているのかを見てみましょう。

観光庁の宿泊旅行統計によると、2025年に山梨県内の宿泊施設に外国人が泊まった数(延べ宿泊者数。1人が2泊すると2人泊と数えます)は約275万人泊でした。前の年より7.7%多く、コロナ前の2019年と比べると約1.3倍です。

都道府県別に並べると、東京・大阪・京都・北海道などに次いで全国で10番目の多さで、県内の宿泊の4分の1を超える27.7%が外国人です(全国平均の27.2%とほぼ同じ)。

日本に来た外国人のうち山梨を訪れた人の割合(訪問率)も8.1%で、全国で8番目でした(観光庁、2025年)。

021人あたりが使うお金は、多いのか

では、たくさん来ている外国人は、山梨でどれくらいお金を使っているのでしょうか。観光庁の調査では、1回の訪問で県内で使うお金は1人あたり19,744円で全国45番目でした(都道府県別の表をもとに当社で順位を算出)。

県内に泊まる日数も平均1.0泊と短めです。富士山を見て、1泊して、次の目的地へ移ってしまう。そんな姿が数字から見えてきます。

注目したいのは、旅行の手配の仕方による違いです。団体ツアーで来た人が県内で使うお金は1人あたり5,024円なのに対し、自分で宿や交通を手配した個人旅行の人は26,742円と、約5倍でした。

団体ツアーの代金に含まれる宿泊や食事は、この金額に入っていません。それでも、行き先や食事が決まったツアーでは、地元のお店に立ち寄る余地は少ないと考えられます。

山梨を訪れる外国人の約4人に1人は、団体ツアーの参加者です(全国は約1割)。これも、金額が低い理由の一つです。地元のお店にとって大切なのは、自分で行き先を選ぶ個人旅行の人に、見つけてもらうことです。

使うお金のうち、飲食費はおよそ4分の1です。山梨県も、食を目的にした観光客の飲食単価を6,230円(令和元年)から9,480円(令和8年)に上げる目標を掲げています。飲食は、まだ伸ばせる余地がある分野です。

03富士北麓と、甲府・峡東・八ヶ岳の差

忍野八海と富士山

山梨の外国人観光客は、県内に均等にいるわけではありません。観光庁の統計(2026年1〜7月、客室20室以上の施設)で、宿泊者のうち外国人が占める割合を市町村ごとに見ると、大きな差があります。

富士河口湖町では、宿泊者の半分以上(51.8%)が外国人です。富士吉田市も45.0%と高い一方で、甲府市は7.6%、笛吹市は6.3%、北杜市は3.9%でした。

同じ期間の外国人の宿泊のうち、約半分は富士河口湖町・富士吉田市・山中湖村の3つの市町村に集まっています。

観光庁の調査(令和7年度、5つの空港で約4,100人に聞いたもの)でも、11.4%が旅行中に富士河口湖を訪れており、小樽(11.3%)と同じくらい、箱根(5.4%)より多い結果でした。富士北麓は外国人に全国有数の人気の観光地である一方、甲府や峡東、八ヶ岳は、外国人の宿泊がまだ少ない地域だといえます。

04国・地域で違う、山梨に来る人と情報の集め方

山梨に泊まる外国人を国・地域別に見ると、2025年は中国(26.2%)、台湾(15.3%)、タイ(8.2%)、香港、米国の順でした。全国では3番目に多い韓国は、山梨では少ないのが特徴です。

ただし、2026年に入ってからは中国からの客が大きく減り、上半期は台湾が1位でした。上半期の外国人の宿泊は前の年の約8割(20.3%減。調査方法の見直しの影響を含みます)で、米国・韓国・欧州からは伸びています。

一方で、日本人の宿泊は約311万人泊と前の年より14.2%多く、上半期として過去最多でした。外国人だけに頼らず、国内の旅行者にも目を向けておくことが大切です。

旅行の前に参考にする情報源も、国・地域によって違います。どの国・地域の人に来てほしいかで、力を入れる発信の場所も変わります。くわしくは「外国人向けショート動画の作り方」で紹介しています。

05場所別に見た、お店の打つ手

河口湖畔のお堂と富士山

ここまでの数字をもとに、お店の場所ごとにできることを整理しました。

富士北麓のお店:すでに来ている人に、もう一歩

富士河口湖町や富士吉田市のお店は、外国人がすでにたくさん歩いている場所にあります。課題は「来てもらうこと」より、入ってもらうこと、ゆっくり過ごしてもらうことです。英語のメニュー、写真で分かる看板メニュー、店の前から中の様子が見える工夫など、入りやすさと注文のしやすさを整えましょう。

山梨を訪れる外国人の約6割は、初めての日本旅行です。注文や支払いの準備は「飲食店のインバウンド対策」でまとめています。

甲府・峡東・八ヶ岳のお店:「わざわざ行く理由」を見せる

外国人がまだ少ない地域のお店は、まず知ってもらうことから始まります。富士山を見たあとに、ワイナリーや果物狩り、温泉、郷土料理を目当てに足を延ばしてもらう。

そのためには、「ここでしか体験できないこと」を写真や短い動画にして、SNSや動画サイト、地図アプリに出しておくことが大切です。桃の花や紅葉など、季節が一目で分かる絵を入れましょう。

季節の撮影は、1年前から計画しておくと安心です。富士北麓からは車で1時間ほど。その距離を越えてでも来る価値があると感じてもらえるかが勝負です。

どちらにも共通すること:個人旅行の人に見つけてもらう

地元のお店でお金を使ってくれるのは、自分で行き先を選ぶ個人旅行の人です。個人旅行の人は、スマホで地図や口コミ、動画を見ながら行き先を決めます。Googleマップの情報を整え、英語でも伝わる写真や動画を用意しておくことが、場所にかかわらず最初の一歩になります。

業種別に見ると

同じ山梨のインバウンドでも、業種によって力を入れるところが変わります。山梨に多い業種を例に、考え方をまとめました。

宿・旅館たとえば旅館なら、予約サイトや地図で宿を比べる人も多いので、客室や食事、温泉の入り方を写真や短い動画で見せ、2泊目を山梨で過ごす楽しみ方(ワイナリーや果物狩りなど)を紹介すると、県内で過ごす日数を延ばすきっかけになります。
ワイナリー・果物狩りたとえばワイナリーや果物狩りの農園なら、「ここでしか体験できないこと」そのものが、わざわざ来る理由になります。畑の風景や収穫の様子を動画で見せ、予約の方法や英語での案内の有無をはっきり書いておくと、個人旅行の人が予定に入れやすくなります。
土産物店・小売たとえば土産物店なら、外国人のお客さんは、どれが山梨の名物かを知りません。写真と短い英語で「何に使うものか」「どこで作られたか」を添え、人気の商品が一目で分かるようにしておきましょう。免税店の場合、2026年11月1日以降は、免税の仕組みがリファンド方式(税込で販売し、出国時の確認のあとでお店が返金する方式)になる点にも注意しましょう。

06外国人が多い季節は、日本人と同じ?

富士山とすすきの湖畔

最後に、外国人が山梨に来る季節を見てみましょう。2025年の山梨の外国人の延べ宿泊者数は、4月が最も多く(約31万人泊)、次いで10月、7月で、最も少ないのは9月でした。日本人の宿泊がいちばん多い8月とは、時期がずれています。

2025年1月は、県内に泊まった人の約4割(38.5%)が外国人でした。8月は約15%です。ただし、2024年は8月が最も多く、ピークの月は年によって変わります。

桜と富士山が見られる春や、紅葉の秋は、外国人に特に人気の季節です。日本人の少ない冬から春に外国人を迎える準備をしておくと、1年を通してお店の売上をならすことにもつながります。山梨県や観光庁が毎月出す統計も、ときどき確かめましょう。

07よくあるご質問

Q英語が話せなくても、外国人のお客さんを迎えられますか?
A

はい。写真つきのメニュー、指差しで注文できる表、翻訳アプリなどを使えば、英語が話せなくても対応できます。山梨を訪れる外国人の多くは英語圏以外の国・地域から来ているので、写真やピクトグラム(絵記号)など、言葉に頼らない工夫がより大切です。

Qどの国・地域の人を狙えばいいですか?
A

まずは、いま実際にお店に来ている外国人のお客さんに、どこから来たかを聞いてみましょう。山梨全体では台湾・中国・タイ・香港・米国などが多いですが、お店の場所や業態によって違います。来ている人の国・地域が分かれば、力を入れる発信の場所も決めやすくなります。

Q外国人向けの広告は、TVerでも出せますか?
A

TVerは日本国内向けのサービスのため、海外に住む人に届けることはできません。海外の人に向けて発信するなら、国や地域を指定できるSNS広告や、動画サイト、Googleマップの情報を整えるのが中心になります。国内の旅行者に向けては、首都圏など地域を指定してTVer広告を流す方法もあります。

Q外国人向けの動画や写真の撮影を頼めますか?
A

はい。言葉に頼らずお店の魅力が伝わる短い動画や、Googleマップ・SNSに使える写真の撮影を承ります。ご相談・お見積もりは無料です。

まとめ

山梨は外国人の宿泊が多い県ですが、1人あたりが使うお金は全国45番目で、外国人が多いのは富士北麓に集中しています。富士北麓のお店は「入りやすさと注文のしやすさ」を、甲府・峡東・八ヶ岳のお店は「わざわざ行く理由」を見せることから。どちらも、地元のお店でお金を使ってくれる個人旅行の人に、地図や動画で見つけてもらうことが第一歩です。

2025年は4月に外国人の宿泊が最も多くなりました。日本人の少ない季節に、準備を進めましょう。

参考:観光庁 宿泊旅行統計調査(2025年 年間値・確定値)/山梨県 令和7年 宿泊旅行統計調査結果/観光庁 インバウンド消費動向調査(2025年 確報・都道府県別、Excelファイル)/観光庁 宿泊旅行統計調査(2026年1〜7月の月別速報、参考第8表。例:7月分のExcelファイル)/山梨県 宿泊旅行統計調査結果(2026年1〜6月)(2026年から調査の区分が変わったため、前の年との比較には見直しの影響が含まれる可能性があります。客室20室以上の施設に限ると、上半期の外国人の宿泊は前の年より6.8%多い95.7万人泊)/観光庁 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート(令和7年度)/山梨県 やまなし観光推進計画 概要

この記事を書いた人 木本 一心ホマレグラフ株式会社 代表取締役 / Ad Arch グループ 山梨県拠点代表

山梨県甲斐市と東京都港区を拠点に、映像制作を軸に、SNSマーケティングと広告の事業を行っています。映像の企画・撮影・編集から、TVer広告やSNS運用まで、広告エージェンシーとして1社でまとめてお任せいただける体制です。全国24拠点・TVer広告の正規代理店ネットワーク「Ad Arch グループ」の一員です。

この記事の数字や制度は、官公庁・業界団体・各社の公式発表で確かめたものだけを載せ、出典を記事の最後に並べています。内容は公開日時点の情報です。

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