動画制作費の勘定科目は?
広告宣伝費と資産計上の考え方

「動画を作ったけれど、この費用はどの勘定科目で処理すればいいのだろう」決算が近づくと、経理のご担当者が迷いやすい点です。全額をその年の経費にしてよいのでしょうか。この記事では、国税庁の公表情報をもとに、経費になる場合と資産になる場合の分かれ目、金額による違い、機材やソフトの扱いを、制作会社の目線で整理しました。
※この記事は、国税庁が公表している情報(主に令和8年4月1日現在の法令等にもとづくもの)をもとにした一般的な解説です。実際の処理は、会社の状況や動画の使い方によって変わります。決算や申告の前に、必ず顧問の税理士にご確認ください。
01動画の制作費は、経費?それとも資産?
動画の制作費の処理には、大きく2つの考え方があります。1つは、「広告宣伝費」として、その期(事業年度)の経費にする考え方です。国税庁のタックスアンサー No.5260 でも、不特定多数の人に向けて宣伝の効果をねらう費用は、交際費ではなく広告宣伝費になると説明されています。
もう1つは、「減価償却資産」として扱う考え方です。資産として計上し、何年かに分けて経費にしていくものです。国税庁は、PR用の映像について、こちらの考え方も示しています。
自社の動画は、どちらになるのでしょうか。まず、国税庁がPR映像をどう扱っているかから見ていきましょう。
02国税庁は、PR映像をどう扱っている?
国税庁が公表している情報の中で、動画の扱いを考えるうえで参考になるのが、次の3つです。
PR用の映像は「耐用年数2年」
国税庁の質疑応答事例では、会社のPRのための映画フィルムについて、PRの効果が期待できる間は使い続けるものとして、耐用年数2年の減価償却資産として扱う考え方が示されています。資産の金額(取得価額)は、制作費だけでなく複製の費用など、直接・間接にかかった費用をすべて含めて1つの資産として処理するのが相当とされています。
なお、この事例は映画フィルムについてのものです。データで納品・配信する今の動画にどこまで当てはまるかは、税理士に確認しましょう。
テレビCMは「1年未満で使い終わる」なら一度に経費に
国税庁のタックスアンサーでは、テレビCMは通常、資産として2年で償却するとしています。そのうえで、放映する期間が1年未満のものは、使い始めた期に一度に経費にできると説明しています。
これは、10万円未満のものを一度に経費にできるのと同じ「少額の減価償却資産」の仕組みです。
1年未満かどうかは、法律で決まった耐用年数ではなく、その業種で一般的に消耗品のように扱われていて、しかもその会社の平均的な使い方からみて1年未満か、で判断します。1968年(昭和43年)の古い回答ですが、ある会社が平均で約5か月使っていたCMを、1年未満のものとして扱ってよいとした例もあります。
03分かれ目は「どれくらいの期間使うか」
国税庁の考え方を、実際の動画の使い方に当てはめると、次のように整理できます。
- 期間を決めて流すCM・TVer広告
- キャンペーンやイベント告知の動画
- 一度に経費にできる可能性がある
- ホームページやYouTubeの会社紹介動画
- 展示会や営業で長く使う動画
- 耐用年数2年の資産になるかが論点
たとえば、TVer広告やシネアドのように、期間を決めて配信する広告の動画は、1年未満で使い終わるなら、一度に経費にできる可能性があります。一方、ホームページやYouTubeに何年も置いておく会社紹介動画は、2年で償却する資産になるかどうかが問題になります。
つまり、1つめの分かれ目は「使う期間」です。国税庁はCMやPR映像を通常は2年で償却する資産としているため、長く使う動画は、資産として扱う必要があるかを確かめておきましょう。もう1つの分かれ目が、次の「金額」です。
業種別に見ると
業種によって動画の使い方には傾向があり、確認しておきたい点も変わります。実際の処理は使い方や金額によって変わるため、最終的には税理士にご確認ください。
04金額による扱いの違い(10万円・20万円・40万円)
資産として扱う場合でも、金額が小さいものは、一度に経費にしたり、短い期間で経費にしたりできる仕組みがあります。
中小企業者等の特例は「40万円未満」に上がった
特に知っておきたいのが、中小企業者等の少額減価償却資産の特例(以下、中小企業者等の特例)です。国税庁のタックスアンサーによると、令和8年度の税制改正により、2026年4月1日以後に取得したものは、取得価額40万円未満が対象になりました(それより前に取得したものは30万円未満)。
対象は、青色申告をしている中小企業者(資本金1億円以下の法人など)で、常時使用する従業員が400人以下の会社です(2026年4月1日以後に取得したもの。それより前は500人以下)。使える金額は1事業年度の合計で300万円までです。2029年3月31日までに取得したものが対象とされています。
なお、通算法人など一部の法人(特定法人)では、従業員の基準は300人以下です。特例を使うときは、事業に使い始めた期に経費として処理し、確定申告書に明細書(別表16(7))を付けて申告します。
改正前の「30万円未満」のままの情報も残っているため、決算の前に国税庁の最新の情報を確認しておきましょう。また、1つの動画を本編と短い版に分けて発注しても、それぞれが特例の対象になるとは限りません。まとめて1つのものとして判断される場合もあるため、税理士に確認することが大切です。
05撮影機材や編集ソフトを買った場合
動画を自社で作るために、カメラや編集用のパソコン、編集ソフトを買った場合も、同じように金額によって扱いが変わります。10万円未満なら一度に経費にでき、それ以上でも、一括償却資産(20万円未満)や中小企業者等の特例(40万円未満)を使える場合があります。
どれにも当たらないものは、資産として決められた年数で償却します。なお、編集ソフトを月額や年額の契約で使っている場合、その使用料は資産ではなく、利用料として経費で処理するのが一般的です。
中小企業者等の特例(40万円未満)は、買い切りのソフトウェアのような形のない資産にも使えます。ただし、特例を使える合計額には上限があるため、機材と動画の両方で使う場合は、全体で計画しておきましょう。
06採用動画・会社紹介動画・SNS運用代行の費用は?
動画の目的によって、使う勘定科目を変える会社もあります。たとえば、採用のための動画は「採用教育費」、SNS運用代行の月々の費用は「広告宣伝費」や「支払手数料」にする、などです。
ただし、どの勘定科目を使うかについて、国税庁が細かく決めているわけではありません。大切なのは科目の名前よりも、「一度に経費にできるのか、資産にするのか」と「交際費にあたらないか」です。会社の中で、同じ種類の費用には同じ科目を使い続けることが基本になります。
- 採用動画:採用の時期だけに使うのか、採用ページに何年も置いておくのか。長く使うなら、PR映像と同じように資産として扱うかが論点になります。
- 会社紹介動画:ホームページや展示会で長く使うことが多く、資産になるかどうかを確認したい動画です。
- SNS運用代行:毎月の投稿や運用の費用は、その月の経費として処理するのが一般的です。
- 交際費との違い:不特定多数に向けた宣伝は広告宣伝費、取引先への接待や贈り物は交際費等、という違いがあります。
07発注のときに知っておくと、あとで楽になること
経理の処理は、動画を作ったあとで考えることが多いものです。ただ、発注の段階で少し意識しておくと、決算のときに判断しやすくなります。
たとえばTVer広告のように配信の期間が決まっている広告は、申込書や配信のレポートに期間が残ります。こうした書類を決算まで取っておくと、「1年未満で使い終わった」ことを説明しやすくなります。
また、補助金を使って動画を作った場合は、補助金の会計処理との関係も出てきます。たとえば中小企業者等の特例は、租税特別措置法の特別償却・税額控除・圧縮記帳を受ける資産には使えないとされています。補助金で買った資産には、補助金の分だけ帳簿の金額を下げる「圧縮記帳」という処理もあります。
どの処理を選ぶかで扱いが変わるため、補助金を使うときは早めに税理士に相談しておきましょう。補助金については「動画制作に補助金は使える?」でも紹介しています。
08よくあるご質問
Q動画の制作費は、全額をその年の経費にできますか?
1年未満で使い終わる動画や10万円未満のものは、一度に経費にできる場合があります。一方、何年も使い続ける動画は、資産として計上し、何年かに分けて経費にする必要がある場合があります。使う期間や金額によって変わるため、税理士にご確認ください。
QTVer広告の配信費は、どう処理しますか?
配信の費用(広告を流してもらう費用)は、広告宣伝費として処理されるのが一般的です。CMの制作費は、使う期間などによって扱いが変わる可能性があるため、見積書や請求書で配信費と制作費を分けておくと判断しやすくなります。
Q見積書や請求書は、どう分けてもらえばいいですか?
制作費、広告の配信費、撮影の機材や素材の費用など、性質の違う費用は分けて記載するのがおすすめです。ホマレグラフでは、ご希望に合わせて内訳を分けた見積書・請求書をお出しします。
Q個人事業主の場合も同じですか?
考え方の基本は似ていますが、特例の要件などが法人とは異なる場合があります。個人事業主の方も、税理士や税務署にご確認ください。
動画の制作費は、一度に経費にできる場合と、資産として償却する場合があります。国税庁はPR映像やCMを耐用年数2年の資産とする考え方を示しています。分かれ目は「1年未満で使い終わるか」と「金額」です。中小企業者等の特例は、2026年4月1日以後に取得したものから40万円未満に上がりました。見積書の内訳を分けておき、最終的な処理は税理士と相談して決めましょう。
参考:国税庁 質疑応答事例(PR用映画フィルムの取得価額)/国税庁 タックスアンサー No.5403(少額の減価償却資産の判定)/国税庁 個別通達(テレビ用コマーシャルフィルムの耐用年数)/国税庁 タックスアンサー No.5408(中小企業者等の少額減価償却資産)/国税庁 タックスアンサー No.5461(ソフトウェア)/国税庁 耐用年数表(器具及び備品)/国税庁 タックスアンサー No.5260(交際費等)
山梨県甲斐市と東京都港区を拠点に、映像制作を軸に、SNSマーケティングと広告の事業を行っています。映像の企画・撮影・編集から、TVer広告やSNS運用まで、広告エージェンシーとして1社でまとめてお任せいただける体制です。全国24拠点・TVer広告の正規代理店ネットワーク「Ad Arch グループ」の一員です。
この記事の数字や制度は、官公庁・業界団体・各社の公式発表で確かめたものだけを載せ、出典を記事の最後に並べています。内容は公開日時点の情報です。