「No.1」「地域最安」は広告に使える?
景品表示法で見直す言葉と、根拠の示し方

「地域No.1」「どこよりも安い」チラシやホームページで見かける言葉ですが、自社の広告に使ってよいのか、迷うことはありませんか。知らずに使って、あとから問題になるのは避けたいものです。この記事では、景品表示法の考え方、根拠の用意の仕方、他社と比べる広告の条件、よくある言い回しの見直し方を、消費者庁の資料をもとに整理します。その一言、根拠を説明できますか。
01なぜ「No.1」の広告が問題になりやすい?
消費者庁は2024年9月、「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しました。きっかけは、No.1表示に関する措置命令(違反した会社に、表示の取りやめや再発防止を命じる行政処分)が増えていたことです。
報告書によると、2023年度に措置命令を受けた44事業者のうち、13事業者がNo.1表示に関するものでした。いずれも、実際の利用者ではなく、ウェブサイトを見た印象で答えてもらう「イメージ調査」を根拠に、「顧客満足度No.1」などと表示していました。
一方で、消費者へのアンケートでは、No.1表示を見たことがある825人のうち約5割が、購入の判断に「かなり」「やや」影響すると答えました。それだけ効く言葉だからこそ、根拠が問われます。
これは大きな通販会社だけの話ではありません。景品表示法の「表示」には、チラシ、ポスターや看板、テレビCM、インターネットの広告から、訪問や電話でのセールストークまで含まれます。地域のお店のチラシやホームページも、同じ考え方で見られます。
02景品表示法は、どんな表示を禁じている?
広告の言葉のルールを定めているのは、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)です。表示そのものは自由ですが、お客様に誤解を与える表示を、主に次の2つの形で禁じています。
- 優良誤認表示:品質や内容を、実際や他社のものより、とても良いと思わせる表示。例は「この技術は日本で当社だけ」と書いたのに、他社も同じ技術を使っていた場合。
- 有利誤認表示:価格や取引の条件を、実際や他社のものより、とても得だと思わせる表示。例は、他社の売価を調べずに「地域最安値」と書いたのに、近くの店より高かった場合。
効果や性能をうたう表示には、「不実証広告規制」もあります。消費者庁から根拠の資料を求められ、原則15日以内に出せないと、実際の効果にかかわらず不当表示とみなされます。根拠は、広告を出す前に手元にそろえておく必要があります。
消費者庁は、措置命令の内容を会社名とあわせて公表しています。対象の商品の売上の3%を納める「課徴金」もあります(額が150万円未満なら課されません)。小さな会社にとっては、金額よりも、地域での信用への影響のほうが大きいかもしれません。
2024年10月の改正では、わざと優良誤認・有利誤認の表示をした場合の罰則(100万円以下の罰金)も新しくできました。都道府県も調査や措置命令を行い、山梨県では県民生活支援課が担当しています。
03「No.1」と書くには、どんな根拠が要る?
消費者庁の報告書は、No.1表示が合理的な根拠に基づくと認められるには、次の4つを満たす必要があるとしています。「医師の90%が推奨」のような、割合で評価を示す表示にも、2つめから4つめの条件は同じように当てはまります。
たとえば「甲府エリアの顧客満足度No.1」と書くなら、甲府エリアの主な同業者と比べ、実際に利用した人に聞いた調査が必要です。ホームページを見せて「満足度が高そうな会社は?」と聞いた調査では、注記を付けても表示と結果が合っていないとされます。
報告書のヒアリングでは、調査会社などに勧められ、1フレーズ10万円から数十万円という費用の安さにひかれた広告主が目立ちました。質問の中身や比べた相手まで把握していたのは、15社中1社だけでした。調査を外に頼んでも、表示の責任は広告主にあります。
04「地域最安」「他店より安い」は何を確かめる?
安さをうたう表示は、有利誤認の考え方で見られます。消費者庁の価格表示の指針は、「他店より安い」などの言葉を使うなら、対象の商品の範囲と条件を明らかにし、安さの理由や程度を具体的に示すよう求めています。
実際に確かめたいのは、次の3つです。
- 比べた範囲:「地域」とはどこまでか。甲府市内か、峡東か、県内か。比べた店をすべて書けるか。
- 調べた日:他店の価格は変わります。いつ調べた価格なのかを記録し、広告を出している間も確かめ続けられるか。
- 条件と対象:一部の商品だけ安いのに、全部が安いように見えていないか。条件を極端に小さな文字で書いていないか。
周りの店の価格を調べないまま「この辺りで一番安い」と書くのは、根拠のない表示の典型です。言い切る代わりに、具体的な価格と内容をそのまま見せるほうが、伝わり方も確かです。
05他社と比べる広告は、何に気をつける?
他社の商品と比べる「比較広告」も、禁止されているわけではありません。消費者庁の「比較広告に関する景品表示法上の考え方」は、次の3つを満たせば問題にならないとしています。
たとえば「A社より20%安い」と書くなら、同じ内容のサービスどうしを、同じ時期の価格で比べている必要があります。A社にだけ付いている保証や作業が抜けたまま比べると、公正な比べ方とはいえません。
調査結果を使うときは、調査した機関、時点、場所などを広告に書くのが適当とされています。自社に都合のよい項目だけを強調して、全体が優れているように見せるのも問題です。また、相手を陥れるための中傷やひぼうになる比べ方も、不当表示になるおそれがあるとされています。
06よくある言い回しは、どう見直せばいい?
中小企業やお店の広告で使いたくなる言い回しと、見直しの例をまとめました。言い換えれば必ず大丈夫というものではなく、根拠と表示が合っているかが大切です。
| 言い回し | 確かめたいこと | 見直しの例 |
|---|---|---|
| 地域No.1 | 何の1位か。地域と比べた相手、調べた時期 | 「甲府市内の施工件数◯件(2025年度、自社集計)」 |
| 顧客満足度No.1 | 実際の利用者に聞いたか。主な同業者を含むか | 「ご利用者アンケートで◯%が満足(2026年◯月、回答◯人)」 |
| 地域最安 | 周りの店を調べたか。いつの価格か | 「◯◯コース◯円(税込)」と価格と内容をそのまま |
| 業界初・唯一 | 他社が本当にしていないか、確かめたか | やっていることを具体的に書く |
| 必ず・絶対 | 例外なく言い切れるか | 条件や目安を添える |
自社のお客様に聞いた結果を使うなら、調べた時期、人数、聞き方を広告の近くに書くのが基本です。消費者庁も、調査の概要を表示物に書くか、QRコードで確かめられるようにするのが望ましいとしています。
なお、口コミや投稿を人に頼むときのルール(ステマ規制)は、「小さな会社のSNS炎上対策」で紹介しています。
業種別に見ると
使いたくなる言葉や、確かめたい根拠は、業種によって変わります。考え方の例をまとめました。
07広告を出す前に、社内で何を確かめる?
景品表示法は、事業者に、表示を管理するための体制づくり(管理上の措置)を求めています。消費者庁の報告書は、根拠となる情報の確認と共有、担当者を決めること、あとから確かめられるようにしておくことなどを挙げています。小さな会社なら、次の流れで十分に始められます。
残しておきたい根拠は、調査票と回答の数、比べた相手の一覧、価格を調べた日と記録、件数の集計表などです。広告を出している間は、すぐに取り出せる場所に置いておきましょう。担当者が替わっても説明できる形にしておくのが理想です。
CMや動画では、テロップだけでなく、ナレーションも表示に含まれます。映像の制作を頼むときは、使いたい言葉とその根拠を、台本の段階で制作会社と共有しておくと、作り直しを防げます。
この記事は一般的な考え方の紹介です。迷う言葉は、広告を出す前に弁護士などの専門家に確認しましょう。業界によっては、公正取引協議会がチラシの表示の事前相談に応じています。
08よくあるご質問
Q「No.1」と書かなければ、問題になりませんか?
そうとは限りません。「地域で一番」「トップクラス」のような言葉でも、実際より優れていると思わせれば同じように見られます。言葉ではなく、表示と根拠が合っているかが大切です。
Q自社のお客様アンケートを根拠にしてもいいですか?
実際の利用者に公平な方法で聞いた結果なら、根拠になり得ます。ただし「No.1」のように他社と比べる表示をするなら、主な同業者も比べる対象に入っている必要があります。調べた時期と人数も記録しておきましょう。
Q調査会社に「適法です」と言われた調査なら安心ですか?
消費者庁の報告書では、適法だと強調して不適切な調査を勧める調査会社もあったとされています。質問の中身と比べた相手を自社で確かめ、責任は広告主にあると考えておきましょう。
QCMやチラシの言葉選びから相談できますか?
はい。伝えたい強みをうかがい、根拠のある事実を言葉や映像でどう見せるかを一緒に考えます。動画の制作からTVer広告やSNSでの配信まで相談できます。法律の判断が必要な点は、専門家への確認をおすすめします。
「No.1」や「地域最安」は、使ってはいけない言葉ではありません。ただし、比べた相手、調べた人、調べ方が適切で、表示と結果が合っていることが条件です。根拠は広告を出す前にそろえ、調べた時期や人数を広告の近くに書く。言い切れないときは、件数や価格など具体的な事実で見せる。それが、知らずに違反しないための近道です。
参考:消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」(2024年9月26日公表)/消費者庁「表示規制の概要」/消費者庁「よくわかる景品表示法と公正競争規約」/消費者庁「事例でわかる景品表示法」(不実証広告規制)/消費者庁「令和6年10月1日施行 改正景品表示法の概要」/消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」/消費者庁「比較広告に関する景品表示法上の考え方」/山梨県「景品表示法について」
山梨県甲斐市と東京都港区を拠点に、映像制作を軸に、SNSマーケティングと広告の事業を行っています。映像の企画・撮影・編集から、TVer広告やSNS運用まで、広告エージェンシーとして1社でまとめてお任せいただける体制です。全国24拠点・TVer広告の正規代理店ネットワーク「Ad Arch グループ」の一員です。
この記事の数字や制度は、官公庁・業界団体・各社の公式発表で確かめたものだけを載せ、出典を記事の最後に並べています。内容は公開日時点の情報です。