採用読了 約10分

地方の中小企業が新卒・若手を採るには。
山梨の統計で見る県外流出とUターン

執筆:木本 一心(ホマレグラフ株式会社 代表)出典 6件を記事の最後に掲載
田んぼの向こうに民家と緑の山並みが広がる地方の風景

新卒の募集を出しても、学生がなかなか来ない。地元の若い人は、みんな東京に行ってしまうのでは。そう感じることはありませんか。この記事では、山梨県の統計から若者の県外への動きを確かめ、採用の日程、学校との関係、インターンシップと会社説明会の見せ方、県外にいる若者への届け方を順に整理します。

01山梨の若者は、何歳で県外に出ている?

山梨県の「令和7年度 山梨県常住人口調査結果報告」から、2024年10月から2025年9月までの1年間の、県外との人の出入りを見てみましょう。

県全体では、県外から来た人が出て行った人を1,052人上回りました。ところが年齢別に見ると、20〜24歳は1,480人の転出超過で、ほかの年代と比べても飛び抜けて大きな数字です。

20〜24歳で県外に出た5,147人のうち、理由が「就職」だった人は2,907人(56.46%)でした。若者が山梨を離れるいちばんのきっかけは、就職です。なお、年代を問わず県外に出た人全体の行き先は、東京都が25.46%で最も多く、神奈川県が続きます。

一方で、同じ年代で県外から山梨に来た人も3,667人いて、そのうち1,573人は就職が理由でした。山梨で働くことを選ぶ若者も、少なくありません。

裏を返せば、就職のときに「山梨にも、働きたい会社がある」と知ってもらえれば、流れを変える余地があるということです。

02山梨に帰ってくる若者は、どれくらい?

同じ調査で、25〜29歳は302人、30〜34歳は217人の転入超過でした。25〜29歳で県外から来た人の理由は、転業・転職(31.42%)と転勤(27.53%)が上位です。ただし、この数字からは、一度県外に出た人が戻ってきたのかどうかまでは分かりません。

一方、山梨県が毎年調べている「県出身学生のUターン就職率」は、2025年3月卒業の人で21.8%でした。県外の大学などを卒業した県出身者のうち、県内で就職した人の割合です。

この数年は26〜27%台で推移していましたが、直近は前の年より4.8ポイント下がりました。この調査は回答した学校の数字で、他県とは比べられないとされています。それでも、大学を出るときに戻ってくる人は5人に1人ほどという目安になります。

Uターン就職した人の就職先は、公務(19.7%)、医療・福祉(15.9%)、製造業(14.0%)が上位でした。公務や病院と比べると、民間の中小企業は、まず学生に名前を知ってもらうところから始める必要があります。

03新卒採用は、いつ何をする?

大学生の採用には、政府が経済団体などに要請している日程があります。2027年度に卒業する学生(2028年3月卒)の日程は、次のとおりです(2026年3月要請)。

  • 広報活動の開始:2027年3月1日以降(卒業する年度に入る直前)
  • 採用選考活動の開始:2027年6月1日以降
  • 正式な内定:2027年10月1日以降

この日程を前提に、中小企業が1年をどう動くかの例をまとめました。

大手の会社の選考が先に進むなかで、中小企業は「春までに名前を覚えてもらう」ことが勝負になります。夏から冬のオープン・カンパニーなどで会社を知った学生が、3月以降に自分から説明会や応募に来てくれる流れを作ります。

なお、こうした場で得た学生の情報を広報や選考に使えるかどうかには、国の考え方が示されています(後の章で紹介します)。6月の選考までの間も、職場見学などで会う機会を作っておきましょう。

高校生の採用には、ハローワークと学校を通じた別の決まりと日程があります。高卒の採用を考えている場合は、管轄のハローワークで早めに確認しましょう。

04学校との関係は、どう作る?

地方の中小企業にとって、学校の先生やキャリアセンターの職員は、学生に会社を紹介してくれる大切な相手です。次のようなことから始めてみましょう。

  • キャリアセンターに会社案内を届ける:県内の大学や短大、専門学校に、求人票と一緒に会社のことが分かる資料を。
  • 卒業生がいれば、出身校に顔を出してもらう:先輩がいることは、学生や先生が会社を身近に感じる手がかりになります。
  • 学校の行事や授業に協力する:企業の話を聞く授業や、職場見学の受け入れなど。
  • 職場の情報を数字で用意しておく:採用した人数や辞めた人数、研修の内容、残業や有給休暇の実績など。

最後の点は、法律にも関わります。若者雇用促進法では、新卒を募集する会社は、規模にかかわらず職場の情報を幅広く提供するよう努めることとされています。応募した学生などから求められたら、「募集・採用の状況」「能力開発の取り組み」「定着を促す取り組み」の3つの分類ごとに1つ以上を示す義務があります。

若者の採用や育成に力を入れ、新卒などの正社員の離職率が直近3年で20%以下といった基準を満たす中小企業は、厚生労働大臣の「ユースエール認定」を受けられます。認定マークは、学生や学校への説明にも使えます。

先に数字をそろえておけば、学校や学生からの質問にもすぐ答えられます。辞める人が少ない会社なら、それ自体が説明の材料になります。

05インターンシップと会社説明会は、どう見せる?

学生のキャリアづくりを支える企業の取り組みは、2022年に、産学協議会の整理を受けて文部科学省・厚生労働省・経済産業省の考え方が改められ、次の4つの類型に分けられました。「インターンシップ」と呼べるのは、このうちタイプ3と4です。

類型主な中身得た学生の情報の扱い
タイプ1 オープン・カンパニー会社や業界を知ってもらう説明会やイベントインターンシップではない。2月末までに行った場合、得た情報は広報・選考に使えない
タイプ2 キャリア教育大学の授業などと組み合わせたプログラムインターンシップではない。2月末までに行った場合、得た情報は広報・選考に使えない
タイプ3 インターンシップ汎用型は5日間以上、専門型は2週間以上。半分を超える日数を職場での就業体験に要件を満たし、募集の時点で示せば、3月以降は広報、6月以降は選考に使える
タイプ4 高度専門型博士課程のジョブ型研究インターンシップなど。試行の段階上の早めに使える扱いは、タイプ3に限られる

タイプ3では、社員が学生を指導して終わったあとに振り返りを伝えること、募集要項をホームページなどで公表することも求められます。

なお、専門活用型(2週間以上)のインターンシップを、卒業する年度に入る直前の春休み以降に行い、そのあとに選考をする場合は、6月の選考開始にとらわれなくてよいという特例もあります(政府の要請による)。

5日間以上の就業体験を用意するのは、小さな会社には負担が大きいかもしれません。まずはタイプ1のオープン・カンパニーで、半日でも現場を見て、社員と話せる場を作るところから始めましょう。

会社説明会で見せたいもの

説明会では、会社の歴史や理念を長く話すより、学生が「ここで働く自分」を想像できるものを見せます。

  • 入社2〜3年目の社員の話:学生と年の近い先輩が、1日の流れや入社の決め手を話す。
  • 現場の様子が分かる映像:工場や現場に入れない日でも、仕事の中身が伝わる。
  • 聞きにくいことへの答え:休日、残業、給料の上がり方。学生が手を挙げて聞きにくいことに、先に答えておく。
  • 山梨での暮らし:通勤の時間、住まい、休日の過ごし方。県外の学生には特に大切です。

説明会で流した動画は、採用ページやSNSにも使えます。作り方は「採用動画の作り方」、社員に出てもらうときの決めごとは「社員を動画に出すときの同意書」をご覧ください。

業種別に見ると

会社説明会やオープン・カンパニーで見せたいものは、業種によって違います。考え方の例をまとめました。

機械・電子部品の製造たとえば機械や電子部品の会社なら、作っている部品が最終的にどんな製品に使われているかを示すと、学生にも仕事の意味が伝わります。県の奨学金返還支援制度に登録しているかどうかも、学生に伝えられるようにしておきましょう。
建設業たとえば建設会社なら、地図を広げて「この道路、この学校をつくった」と見せると、仕事の中身が伝わりやすくなります。県内で暮らす学生には身近な場所ばかりです。現場に入れない日のために、工事の始まりから完成までを短くまとめた映像を用意しておくと安心です。
医療・福祉たとえば病院や福祉施設なら、Uターン就職の上位の業種でもあり、県外の学生にも関心を持たれやすい分野です。資格を取ったあとの研修の流れや、先輩の1日のスケジュール、夜勤の回数など、学生が聞きにくいことを先に示しておきましょう。

06県外にいる若者には、どう届ける?

県外の大学に進んだ若者や、東京で働く20代に、山梨の会社のことを知ってもらう方法もあります。

山梨県には、県と中小企業が半分ずつ負担して若手社員の奨学金の返還を支える「やまなし人材定着奨学金返還支援事業」があります。県の案内では、日本学生支援機構の奨学金の総額の2分の1を8年間で補助し、補助の総額は120万円が上限です。登録している会社であることは、学生への説明材料になります。条件や登録の方法は、県の窓口で確かめてください。

帰省する人が増える年末年始やお盆の前後は、地元の会社を思い出してもらいやすい時期です。山梨に住む家族の目に触れる発信も、若者に届く道になります。動画広告を地域を絞って出す方法は「TVer広告は地域指定できる?」で紹介しています。

07よくあるご質問

Q中小企業でも、新卒採用はしたほうがいいですか?
A

毎年でなくてもかまいません。2〜3年に1人でも新卒を迎えると、社員の年代の偏りを和らげられます。まずはオープン・カンパニーや学校との関係づくりから始め、学生に名前を知ってもらうことが先です。

Qインターンシップに来た学生を、そのまま選考してもいいですか?
A

国の考え方では、学生の情報を採用選考に使えるのは、条件を満たしたタイプ3のインターンシップで、募集の時点でその旨を示した場合などに限られ、時期も決まっています。詳しくは文部科学省・厚生労働省・経済産業省の資料や、大学のキャリアセンターに確認しましょう。

QUターンやIターンの若手は、新卒と同じ採り方でいいですか?
A

社会人の場合は、新卒の日程にとらわれず、通年で受け付ける形が合っています。住まい探しや引っ越しの時期など、県外から来る人ならではの心配に答える情報を、採用ページに用意しておきましょう。

Q会社説明会で流す動画や、県外向けの広告も相談できますか?
A

はい。ホマレグラフでは、説明会や採用ページで使う動画の撮影・編集、SNSでの発信、地域を指定した動画広告の配信について相談できます。ご相談・お見積もりは無料です。

まとめ

山梨では、20〜24歳が就職をきっかけに県外へ出る動きが最も大きく、大学を出て県内に戻る人は5人に1人ほどです。春までに学生に名前を覚えてもらうこと、学校と関係を作り職場の情報を数字で示すこと、説明会で働く姿を見せること、県外の若者や家族にも届けること。この積み重ねが、地方の中小企業の採用を支えます。

参考:山梨県「令和7年度 山梨県常住人口調査結果報告」/山梨県「R7年3月卒 県出身学生のUターン就職率の調査結果」/厚生労働省「2027年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」/文部科学省・厚生労働省・経済産業省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」(2022年6月改正)/厚生労働省「若者雇用促進法の概要」/山梨県「やまなし人材定着奨学金返還支援事業(企業の方へ)」(いずれも2026年10月27日に確認)

この記事を書いた人 木本 一心ホマレグラフ株式会社 代表取締役 / Ad Arch グループ 山梨県拠点代表

山梨県甲斐市と東京都港区を拠点に、映像制作を軸に、SNSマーケティングと広告の事業を行っています。映像の企画・撮影・編集から、TVer広告やSNS運用まで、広告エージェンシーとして1社でまとめてお任せいただける体制です。全国24拠点・TVer広告の正規代理店ネットワーク「Ad Arch グループ」の一員です。

この記事の数字や制度は、官公庁・業界団体・各社の公式発表で確かめたものだけを載せ、出典を記事の最後に並べています。内容は公開日時点の情報です。

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