社員を動画に出すときの同意書
退職したら消す?決めておくこと

採用動画や会社紹介、SNSのリール。社員が出る動画は、会社の雰囲気が伝わりやすい方法です。一方で、出演した社員が辞めたとき、その動画をどうするかで迷うことはありませんか。この記事では、撮影の前に決めておきたいことと、同意書に入れておきたい項目、作り直しを少なくする撮り方を、撮影する側の目線で順に整理します。
01社員の映像は、法律でどう扱われる?
社員を動画に出すとき、まず考えたいのが「肖像権」です。肖像権は、勝手に撮られたり、撮られた写真や動画を勝手に公開・利用されたりしない権利のことです。法律の条文に書かれた権利ではありませんが、裁判の積み重ねで認められてきました。
もう一つ、見落としやすいのが個人情報保護法です。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、個人情報には映像や音声による情報も含まれるとしています。例として挙げられているのは「防犯カメラに記録された情報等本人が判別できる映像情報」です。つまり、顔が写り、誰だか分かる社員の映像は、個人情報として扱う必要があると考えておくのが安全です。
ガイドラインでは、個人情報を使う目的は、本人が取り扱いを予測できる程度に、できる限り具体的に決めるよう求めています。「事業活動に用いるため」のような書き方では、具体的とはいえないとされています。動画で言えば、「採用動画として、自社の採用ページとInstagramで公開する」くらいまで具体的に決めておきたいところです。
- 勝手に撮られない・公開されない権利
- 法律の条文ではなく、裁判で認められてきた
- 本人の同意をもらって撮る・使う
- 本人が分かる映像も個人情報にあたる
- 使う目的をできる限り具体的に決める
- 退職後などに、消してほしいと求められることがある
また、会社と社員は上下の関係にあります。弁護士ドットコムニュース(2024年7月)では、上の立場を使って無理に同意させた場合、その同意は無効になる可能性があるという弁護士の見解が紹介されています。出たくない人には、断れる雰囲気をつくっておくことも大切です。
02同意書に入れておきたい6つの項目

個人情報保護委員会のガイドラインでは、同意の取り方として、口頭、書面、メール、確認欄へのチェックなどが挙げられています。口頭でも同意にはなりますが、あとで「そんな説明は聞いていない」とならないよう、書面(紙かデータ)で残すのがおすすめです。
公的機関の様式も参考になります。たとえば秋田労働局の大館公共職業安定所が、企業PRシートに写真を載せるときに使う「肖像権使用承諾書」には、写真の用途、その際に複製・編集・加工が行われること、使う期間、報酬が支払われないことなどが書かれています。これを参考に、会社の動画で入れておきたい項目をまとめると、次の6つです。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 目的 | 採用活動、会社や商品の紹介など |
| 媒体 | 自社サイト、YouTube、Instagram、TVer広告、展示会など |
| 期間 | 公開から◯年、または次の改訂まで |
| 退職時の扱い | 退職後◯か月以内に差し替え・非公開にする、など |
| 編集 | 切り出し、字幕、短い版や静止画への加工があること |
| 報酬・連絡先 | 出演料の有無、取り下げを申し出る窓口 |
特に大事なのが「媒体」です。最初は採用ページだけのつもりでも、あとからSNSの広告や、展示会の大きな画面で流したくなることがあります。使うかもしれない場所は、最初に全部書いておくと、そのたびに同意を取り直す手間が減ります。反対に、書いていない使い方をするときは、改めて本人に確かめましょう。
「編集」の項目も入れておきます。長い版の動画から、15秒の広告や縦型のリール、チラシ用の静止画を切り出すこともあります。表情の一瞬を切り取った静止画は、本人の受け取り方が動画と違うこともあります。どんな加工がありうるかを、具体的に伝えておきましょう。
03退職したら消す? 決めておく考え方
いちばん悩むのが、出演した社員が辞めたときです。法律で「何か月以内に消す」と決まっているわけではありません。ただ、考えるヒントになる情報はあります。
個人情報保護委員会のガイドラインでは、本人が利用の停止や消去を求めることができる場合の一つに、「本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合」を挙げています。その例の一つが、退職した人の情報を、今も在籍しているかのように載せ続けている場合です。
なお、動画のファイルがこの決まりの対象(保有個人データ)にあたるかは、管理のしかたによって変わります。
また、先ほどの弁護士ドットコムニュースの記事では、社員としての出演は「その会社の社員であること」が前提なので、退職後に削除を求められる可能性がある、という見解が紹介されています。
- インタビューなど、顔と名前が出る場面
- 「社員の声」として出ている場面
- 今も在籍しているように見える使い方
- 手元や後ろ姿など、誰か分かりにくい場面
- 大勢の中の一人として写っている場面
- 製品や建物が中心で、人が小さく写る場面
こうしたことをふまえると、たとえば次のような決め方が考えられます。
- 「社員の声」として出る動画:退職したら、決めた期間のうちに差し替えるか、非公開にする。今も在籍しているように見えるのを避けるためです。
- 作業の手元や後ろ姿など、誰か分かりにくい場面:退職後も使い続けてよいかを、同意書で本人に選んでもらう。
- すでに配った物(チラシ、配信済みの広告など):回収できないことを、前もって説明しておく。
退職の連絡があったときに誰が動画を直すのか、社内の担当も決めておきましょう。YouTubeやInstagramの投稿は、会社の担当者が自分で非公開や非表示にできます。一方、編集し直しが要る動画は、制作会社に頼むことになります。その費用や期間も、最初の見積もりの段階で聞いておくと安心です。
ガイドラインでは、利用の停止にお金がかかりすぎるなど対応が難しい場合は、本人の権利を守る別の方法をとればよいともされています。とはいえ、そこで迷わないためにも、「辞めたらどうするか」は撮る前に決め、同意書に書いておくのがいちばんです。
04作り直しを少なくする撮り方
人の入れ替わりは、どの会社にもあるものです。少ない人数で回している会社ほど、1人辞めるだけで「動画を丸ごと作り直し」になりかねません。そこで、撮影の段階でできる工夫があります。
顔の出る場面と、出ない場面を分けて撮る
インタビューのように顔がはっきり出る場面と、手元・作業風景・建物・製品のような場面を、別々のカットとして撮っておきます。編集でも、顔の出る場面を一つのまとまりにしておくと、そこだけ差し替えれば済みます。
インタビューは、短い単位で区切る
1人の社員が5分話し続ける構成より、3〜4人が30秒ずつ話す構成のほうが、1人分を入れ替えやすくなります。テロップの名前や役職も、別のパーツにしておくと直しやすくなります。
差し替え用の素材を、同じ日に撮っておく
同じ撮影日に、ほかの社員の話や、職場の様子を少し多めに撮っておくと、あとで入れ替えるときに追加の撮影をしなくて済みます。撮った素材は、会社でも保管しておきましょう。
「出たくない人」が写らない段取りにする
職場の全体を撮るときは、写りたくない人がいないかを、撮影の前に確かめておきます。写りたくない人は、その時間だけ別の作業をしてもらう、カメラの向きを変える、ぼかしを入れるなどの方法があります。あとで「やっぱり出たくない」と言われてからぼかしを入れるより、撮る前に分けておくほうが、仕上がりもきれいです。
採用動画の内容や長さの考え方は「採用動画の作り方」で詳しく紹介しています。
業種別に見ると
誰が、どんな場面で写るかは、業種によって違います。山梨に多い業種で、同意と撮り方の考え方の例をまとめました。
05お客様や子どもが写るとき

社員だけでなく、お客様が写ることもあります。たとえば、石和温泉の旅館でお客様がくつろぐ様子や、甲府の美容室で施術を受ける場面、地域のお祭りに出店したときの様子などです。
お客様は、撮る前に声をかける
顔が分かるように写るお客様には、撮影の前に目的と使う場所を伝え、同意をもらいます。お店の中で撮るときは、撮影中であることを入口に貼り出す、写りたくない人の席は外して撮る、といった配慮も役立ちます。遠くの人影など、誰か分からない程度に写すのも一つの方法です。
子どもは、保護者の同意を
学習塾や保育、スポーツ教室、観光農園の家族連れなど、子どもが写る場面は特に注意が要ります。個人情報保護委員会のガイドラインでは、未成年者が判断できる力を持っていない場合などは、親権者などの法定代理人から同意を得る必要があるとしています。
何歳までの子どもなら保護者の同意が要るかについて、委員会のQ&Aは、個人情報の項目や事業の性質などで個別に判断するとしたうえで、「一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもについて」は法定代理人などから同意を得る必要があると考えられる、としています。
子どもが写る動画は、保護者の同意をもらったうえで、本人にも「動画に出てもいいか」を聞いておくと安心です。名札や学校名が分かる服など、場所や身元につながるものが写らないかも確かめましょう。
06同意をもらうタイミングと、保管のしかた
同意書は、撮影の当日にいきなり渡すより、前もって説明しておくほうが、本人も考える時間がとれます。おすすめの流れは、次のとおりです。
同意書は、動画を使っている間はずっと保管しておきます。動画のファイル名と、出演した人の同意書がすぐ結びつくように、一覧表にしておくと便利です。担当者が替わったときや、退職の連絡があったときに、どの動画を直せばよいかがすぐ分かります。動画の使い方を広げるときも、この一覧を見れば、改めて同意が要るかどうかを判断できます。
説明のときは、完成した動画のイメージを見せられると、本人も判断しやすくなります。似た雰囲気の動画や、絵コンテ(場面ごとの下書き)を見せながら、「この場面で、このくらい顔が写ります」と伝えましょう。完成した動画は、公開する前に出演した本人にも見てもらうと、行き違いを防げます。
また、一度同意した人が、あとから取り下げを申し出ることもありえます。申し出の窓口(総務の担当者など)を同意書に書いておくと、本人も会社も安心です。
07よくあるご質問
Q同意は口頭でもいいですか?
個人情報保護委員会のガイドラインでは、口頭の意思表示も同意の取り方の一つとして挙げられています。ただ、何に同意したのかが、あとで分からなくなりがちです。目的・媒体・期間・退職時の扱いを書いた書面か、メールなどのデータで残しておくのがおすすめです。
Q退職した社員から「動画を消してほしい」と言われたら?
まず同意書の内容を確かめましょう。退職時の扱いを決めていなかった場合でも、本人の申し出には、できるだけ丁寧に向き合うのが基本です。差し替えや非公開にするほか、すぐに対応できない物は事情を説明するなど、状況に応じた対応を考えます。判断に迷うときは、弁護士などの専門家に相談してください。
Qパート・アルバイトの方が出るときも、同意書は必要ですか?
雇い方に関係なく、本人が分かる形で動画に出る人には、同じように同意をもらっておくのが安全です。働く期間が決まっている方は、退職時の扱いを特にはっきり決めておきましょう。
Q差し替えやすい構成で、採用動画を作ってもらえますか?
はい。ホマレグラフ株式会社では、顔の出る場面とそうでない場面を分けて撮る、インタビューを短い単位で区切るなど、あとから差し替えやすい構成で制作します。撮影の前に、出演される方への説明の流れも一緒に整理します。ご相談・お見積もりは無料です。
本人が分かる社員の映像は、個人情報としても扱います。同意は書面で、目的・媒体・期間・退職時の扱い・編集・報酬と連絡先の6つを、撮る前に決めましょう。退職した人は差し替えか非公開を基本にし、顔の出る場面を分けて撮っておけば、作り直しは少なくて済みます。
ここでの内容は2026年10月時点の公的な情報をもとにした一般的な説明です。同意書の文面や個別のケースは、弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」/個人情報保護委員会「ガイドラインに関するQ&A」Q1-62/秋田労働局 大館公共職業安定所「肖像権使用承諾書」(企業PRシート用)様式/弁護士ドットコムニュース「業務で『会社のSNS動画』に出演、退職後に削除してもらえる?」(2024年7月14日)(いずれも2026年10月27日に確認)
山梨県甲斐市と東京都港区を拠点に、映像制作を軸に、SNSマーケティングと広告の事業を行っています。映像の企画・撮影・編集から、TVer広告やSNS運用まで、広告エージェンシーとして1社でまとめてお任せいただける体制です。全国24拠点・TVer広告の正規代理店ネットワーク「Ad Arch グループ」の一員です。
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