歯科医院の集客と医療広告ガイドライン。
ホームページ・SNS・動画で使える表現、使えない表現

「医院の良さを発信したいけれど、どこまで書いていいのか分からない」歯科医院の院長にとって、集客と医療広告の決まりは切り離せない悩みです。この記事では、厚生労働省の最新のガイドラインと資料をもとに、ホームページ・SNS・動画で使える表現と使えない表現、患者さんが医院を選ぶ理由を整理します。決まりを守りながら、何を伝えればいいのでしょうか。
01歯科医院の集客は、なぜ難しくなっているのか?
厚生労働省の医療施設調査では、2025年10月1日時点で全国の歯科診療所は6万5,624施設でした。前の年より754施設減ったものの、今も多くの医院があります。
山梨県には395施設あり、人口10万人あたりでは50.6施設です。全国の53.3施設よりやや少ないものの、大きな差はありません。患者さんにとっては、選べる医院が身近に複数ある状態です。
患者さんは、医院をどう選んでいるのでしょうか。少し前のものですが、日本歯科医師会の2016年の調査では、かかりつけ歯科医を選ぶポイントは「立地」が56.1%で最も多く、「丁寧さ」41.1%、「技術」32.4%、「歯科医師への信頼」29.5%と続きました。
情報の集め方も見ておきましょう。厚生労働省の受療行動調査(2023年、病院の外来患者)では、医療機関を選ぶ情報の入手先は「家族・友人・知人の口コミ」が68.4%で最も多く、「医療機関が発信するインターネットの情報」が28.8%でした。
通いやすさに加えて、丁寧さや信頼といった「人」の部分が選ぶ理由になっています。ただし、それを伝える言葉には、医療ならではの決まりがあります。
02ホームページやSNSも「広告」になるのか?
なります。2018年6月に施行された改正医療法で、医療機関のホームページも、チラシや看板と同じく規制の対象になりました。決まりの中身は、厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」(2026年3月30日最終改正)にまとめられています。
ガイドラインでは、次の3つをすべて満たすものを「広告」として扱います。
- 誘引性:患者さんの受診を促す意図があること。
- 特定性:医院の名前や歯科医師の名前が分かること。
- 医業・歯科医業や、診療所に関する内容であること。
医院のSNSや動画も、この3つを満たせば広告です。一方、院内の掲示や院内で配るパンフレット、職員募集の広告は、原則として広告に当たりません。ただし、院内で流している動画でも、YouTubeやホームページに載せれば広告として扱われます(3つの条件を満たす場合)。
決まりは「何人も」(だれでも)が対象で、広告を作った代理店なども指導の対象になりえます。虚偽の広告や、行政の中止・是正命令に従わない場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています。
03使えない表現には、どんなものがある?
ガイドラインとQ&Aに出てくる例から、歯科医院で使いがちな表現をまとめました。
| 区分 | 使えない表現の例 | 理由・補足 |
|---|---|---|
| 比べて優れていると言う | 「No.1」「日本一」「最高」「最良」 | 事実であっても使えない |
| 誇大・根拠がない | 「最先端の治療」「最適な治療」「痛くない治療」 | 「最新」は事実で根拠を示せれば可 |
| 患者さんの体験談 | 「治療してよかった」という感想の掲載 | 自院のサイト・SNSでは不可 |
| 説明のない前後写真 | 治療前・治療後の写真だけを並べる | 条件を満たせば可(次の章) |
| 費用の強調 | 「今なら○円」「期間限定50%オフ」 | 品位を損ねる広告として慎む |
| 認められない科名 | 「インプラント科」「審美歯科」 | 歯科・小児歯科・矯正歯科・歯科口腔外科は可 |
「歯を削らない治療」は、削らなくても適正な治療ができる範囲なら書けます。しかし「痛くない治療」は、科学的な根拠がない表現として広告できません(Q&A Q3-22)。似た言葉でも扱いが分かれるので、一つずつ確かめましょう。
口コミにも注意が必要です。特典と引き換えにGoogleの口コミを頼んだ歯科医院が、2025年3月に消費者庁から措置命令を受けました。詳しくは「小さな会社のSNS炎上対策」をご覧ください。
04ビフォーアフターと自由診療は、どうすれば載せられる?
治療前後の写真は、全面的に禁止されているわけではありません。ただ、治療の効果はもともと広告できる事項ではないため、載せられるのは、次の「限定解除」の条件を満たしたホームページなどに限られます。ホワイトニングや矯正などの自由診療を詳しく載せるときも、同じ4つの条件をすべて満たす必要があります。
そのうえで、前後の写真には治療内容、費用、主なリスクや副作用の詳しい説明を付けます。説明を別のページへのリンクにしたり、極端に小さな文字にしたりするのは認められません。治療前だけ、治療後だけの写真も、前後の写真と同じく、患者さんを誤認させるおそれがある表現とされています(Q&A Q2-8)。
事例解説書には、ホワイトニングの動画の改善例が載っています。施術の内容、期間と回数、費用、知覚過敏や色ムラといったリスクを、動画の中か概要欄にまとめて示す形です。概要欄に書く場合は、動画の中で「詳しくは概要欄へ」と場所を伝えます。
バナー広告や検索連動広告は、患者さんが自ら求めて見る情報ではないため、1つ目の条件を満たしません。また、問い合わせ先が「予約専用」の電話番号や自動返信のメールだけの場合も、条件を満たさないとされています(Q&A Q6-10)。
05動画とSNSで、特に気をつけることは?
厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」(第6版、2026年3月)には、SNSと動画の事例が載っています。動画の事例には、歯科のホワイトニングも取り上げられています。
- 動画は、プロフィール、動画本体、タイトル、概要欄のすべてが広告の対象。テロップ、音声、ハッシュタグも含まれる。
- SNSの投稿は、1つの投稿が1つの広告として扱われる。費用やリスクの説明は、同じ投稿の中で示す。
- 患者さんが治療の内容や効果について感想を話す映像は、体験談として広告できない。リスクについて話している場合も体験談とみなされる。
同じ資料では、「口コミで評判の歯科医」「1回目から効果を実感できます!」「動画の最後にはお得なキャンペーン情報も!」といった言い回しが、問題のある例として挙げられています。話し言葉の動画では、つい口にしがちな表現です。
厚生労働省のネットパトロールの報告(2025年度、2026年2月末時点)では、違反があった1,842サイトのうち、歯科は377サイトでした。InstagramとTikTokでは、ビフォーアフターの違反が最も多く見つかっています。
- 医院の外観、待合室、診療室などの院内
- 院長・スタッフの紹介(氏名・役職・略歴など)
- 検査や治療の様子(治療前後の写真を除く)
- 診療時間、駐車場、予約の方法
- 患者さんが感想を話すインタビュー
- 説明のない治療前・治療後の映像
- 「最先端」「痛くない」などのテロップや音声
- 費用の安さやキャンペーンを強調する演出
院内や外観、スタッフの紹介、診療の様子は、写真でも映像でも広告できます(Q&A Q3-13・Q3-14)。撮れるものは、思っているより多いのです。
06患者さんに選ばれるために、何を伝えればいい?
決まりを守ったうえで、患者さんが知りたいことを丁寧に伝える。それが、医院を選んでもらうための土台になります。
通いやすさを、具体的に見せる
選ぶ理由の1位は立地でした。車で通う人のために、駐車場の台数や入りやすさ、診療時間を分かりやすく載せましょう。駐車場から受付までを短い動画で見せると、初めての人の不安が減ります。
院長とスタッフの人柄を伝える
丁寧さや信頼は、言葉で「丁寧です」と書くより、話している姿を見てもらうほうが伝わります。院長のあいさつや、治療の流れの説明を動画にするのも一つの方法です。開院からの年数や「はじめまして」といったあいさつは、広告できる内容とされています(Q&A Q1-6)。
スタッフに出てもらうときの同意の取り方は「社員を動画に出すときの同意書」で紹介しています。
定期検診の価値を伝える
日本歯科医師会の2024年の調査では、定期的にチェックを受けている人は48.6%でした。受ける理由で最も多いのは「安心できるから」(53.7%)でした。検診の流れや、受けるとどうなるかを、怖くない雰囲気で見せましょう。
どの表現が使えるかは、内容によって判断が分かれます。迷ったときは、医院のある地域の保健所や、医療法に詳しい専門家に確認してください。
業種別に見ると
同じ歯科でも、診療の内容によって患者さんが知りたいことは変わります。考え方の例をまとめました。
07よくあるご質問
Q患者さんの声を載せることはできますか?
医院のホームページやSNSに、治療の内容や効果についての患者さんの体験談を載せることはできません。患者さんが自分のSNSや口コミサイトに書くことは、医院が頼んだり費用を負担したりしていなければ、広告に当たりません。
Q「最新の機器」と書いてもいいですか?
医学的・社会的な常識の範囲で事実であれば、必ずしも禁止されていません。ただし、根拠を示せる必要があります。「最先端」は使えません。
Q待合室で流す動画にも決まりはありますか?
院内の掲示は原則として広告に当たりません。ただ、同じ動画をホームページやSNSにも載せるなら、広告として決まりを守った内容にしておくと安心です。
Q医院の紹介動画の撮影を相談できますか?
はい。院内や外観、院長・スタッフの紹介、通院の流れなど、広告できる範囲を確かめながら撮影・編集を相談できます。SNSでの発信もあわせてご相談ください。ご相談・お見積もりは無料です。
歯科医院のホームページやSNS、動画は、医療法の広告の決まりの対象です。「No.1」「最先端」「痛くない」、患者さんの体験談、説明のない前後写真は使えません。一方で、院内や外観、院長・スタッフの紹介、診療の様子は、写真でも映像でも伝えられます。通いやすさと人柄、定期検診の価値を決まりの範囲で丁寧に見せることが、選ばれる土台になります。
参考:厚生労働省 医療法における病院等の広告規制について/厚生労働省「医療広告等ガイドライン」(2026年3月30日最終改正)/厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」(2026年3月改定)/厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」(2026年3月)/厚生労働省「ネットパトロール事業について(令和7年度)」(2026年3月)/e-Gov法令検索 医療法/厚生労働省「令和7(2025)年医療施設(動態)調査」/厚生労働省「令和5(2023)年受療行動調査(概数)」/日本歯科医師会「歯科医療に関する一般生活者意識調査」(2016年)/日本歯科医師会「歯科医療に関する一般生活者意識調査」(2024年)/消費者庁 医療法人社団に対する措置命令(2025年3月)
山梨県甲斐市と東京都港区を拠点に、映像制作を軸に、SNSマーケティングと広告の事業を行っています。映像の企画・撮影・編集から、TVer広告やSNS運用まで、広告エージェンシーとして1社でまとめてお任せいただける体制です。全国24拠点・TVer広告の正規代理店ネットワーク「Ad Arch グループ」の一員です。
この記事の数字や制度は、官公庁・業界団体・各社の公式発表で確かめたものだけを載せ、出典を記事の最後に並べています。内容は公開日時点の情報です。