学習塾の生徒募集はいつ、何をする?
保護者が見るポイントと、体験授業までの流れ

「チラシを配っても、問い合わせが来ない」子どもの数が減るなかで、これまでと同じ募集のやり方を続けてよいのか迷う塾長もいるでしょう。この記事では、国と山梨県の統計から募集の時期の山を確かめ、保護者が塾を選ぶときに見るポイント、チラシ・Web・動画・口コミの組み合わせ方、体験授業までの流れを順に整理します。地域の塾は、いつ何をすればいいのでしょうか。
01生徒が集まりにくいのは、なぜか?
まず、子どもの数を見てみましょう。山梨県の学校基本調査では、2026年度(速報)の小学生は3万5,203人、中学生は1万8,997人でした。
5年前(2021年度)と比べると、小学生は8.7%、中学生は9.3%減っています。しかも、小1は5,402人、小6は6,276人と、下の学年ほど人数が少なくなっています。待っていれば生徒が来る時代ではありません。
高校生(全日制・定時制)も2万434人で、前の年より271人減りました。小学校は173校と1年で3校減り、小中一貫の義務教育学校が1校できています。
2021年の経済センサスでは、山梨県の学習塾(個人経営を除く)は108事業所で、6割強が従業者4人以下でした。従業者の少ない小さな塾が多いことも、地域の特徴です。
02募集の山は、何月に来るのか?
経済産業省の特定サービス産業動態統計調査には、全国の学習塾(一定規模以上の企業)の月ごとの受講生数が載っています。2024年の動きを見てみましょう。
受講生がいちばん少ないのは3〜4月です。受験生が抜けるため、1月から4月にかけて約13%減っています。そこから5月に増え始め、7〜8月の夏期講習で伸び、12〜1月が1年でいちばん多い時期になります。
つまり、春に抜けた分を、夏までにどれだけ取り戻せるかが勝負です。夏期講習は、新しい生徒が入ってくる大きな入口になります。
売上の山は、夏期講習の8月、冬期講習の12月と1月、教材の売上も多い4月でした。なお、この調査は2024年12月分で終わり、2025年からは総務省の別の調査に引き継がれています。
031年の募集の予定は、どう組む?
全国の動きと、山梨県の公立高校入試の日程を重ねて、1年の予定を組んでみましょう。2027年の入試(いまの中3が受ける入試)は、前期の検査が1月28・29日、後期の学力検査が3月3・4日です。
後期の合格発表は3月11日の予定です。受験生が卒業するこの時期は、新しい学年の生徒を迎える準備の時期でもあります。
| 時期 | 塾の動き | 募集でやること |
|---|---|---|
| 1〜2月 | 受験の本番。新年度の準備 | 新学年の案内、春期講習の告知 |
| 3〜4月 | 受験生が抜け、生徒が最も少ない | 春期講習、新学年の体験授業 |
| 5〜6月 | 定期テストが始まる | テスト前の対策講座、夏期講習の告知 |
| 7〜8月 | 夏期講習 | 講習から通常授業へつなぐ面談 |
| 9〜12月 | 中3の受験準備。冬期講習 | 2学期の成績を受けた相談、冬期講習 |
文部科学省の子供の学習費調査(2023年度)では、公立中学校の生徒1人あたりの塾の費用(通っていない生徒も含めた平均)は、中1が年13万3,647円、中3が34万1,220円でした。中2・中3になるほど、塾にかける費用が大きくなります。中1や小学校高学年のうちに知ってもらうことが、先の生徒募集につながります。
04保護者は、何を見て塾を選ぶのか?
総務省の家計調査(2025年)では、甲府市の二人以上の世帯の、中学生の補習教育(塾など)への支出は1世帯あたり年5,155円(中学生のいない世帯も含む平均)でした。全国の1万3,273円の4割ほどで、52市の中で46番目です。
調べた世帯が少なく、年による振れも大きい数字です。ただ、塾に通うのが当たり前とは限らない地域だと考えると、「なぜ塾が必要か」から伝える意味が見えてきます。
同じく子供の学習費調査では、塾にお金を払った家庭の割合は、公立中学校で66.0%、公立小学校で39.0%でした。小学生のうちは、まだ塾を考えていない家庭も多いのです。
民間の調査(2026年5月、全国170人)では、塾選びで最も重視する点は「講師の質・人柄」24.1%、「通いやすさ」20.0%、「合格実績」18.8%でした。参考にした情報は「知人・友人の紹介」「口コミ」「体験授業」が上位です。
- 塾長や講師は、どんな人か。子どもと合いそうか。
- 教室の雰囲気は、落ち着いて勉強できそうか。
- 送り迎えはしやすいか。駐車場や、車を止めて待てる場所はあるか。
- 入会金や教材費を含めて、1年でいくらかかるか。
- 成績や学習の様子を、どう知らせてくれるか。
車で送り迎えをする家庭のために、通いやすさの中身も具体的に伝えましょう。
05チラシ・Web・動画・口コミは、どう組み合わせる?

それぞれに役割があります。一つに頼るのではなく、知ってもらう、確かめてもらう、決めてもらうの流れで組み合わせます。
チラシは、学区を絞って家庭に届けられる手段です。チラシの反響率の考え方や、折込とポスティングの違いは「チラシの反響率の平均は?」で詳しく紹介しています。
チラシを見た保護者が、塾の名前で検索して確かめることもあります。そのとき、塾長が話す短い動画や、授業中の教室の様子があると、「講師の人柄」や「雰囲気」が伝わります。
Googleマップの教室の情報も見直しましょう。授業の時間帯、駐車場の有無、入口の写真があると、初めての保護者が迷わず来られます。
生徒の顔が写る写真や動画は、載せる前に保護者の了解をもらいましょう。後ろ姿や手元だけでも、教室の空気は十分に伝わります。
紹介をお願いするときは、紹介した家庭への特典の有無や内容を、はっきり決めておきましょう。紹介や口コミを頼むときの注意は「小さな会社のSNS炎上対策」をご覧ください。
業種別に見ると
同じ教育の仕事でも、教え方によって保護者に見せたいものは変わります。考え方の例をまとめました。
06問い合わせから入塾までは、どう進める?
問い合わせが来ても、入塾につながらないことがあります。流れを決めておくと、取りこぼしが減ります。
体験授業の前には、保護者と短く話す時間を取りましょう。苦手な教科や、家での勉強の様子を聞いておくと、体験授業の中身を合わせられます。
体験授業のあとの連絡では、授業中の様子や、できるようになったことを具体的に伝えます。子どもの「できた」を保護者に伝えることが、入塾を決める後押しになります。
契約の前に知っておきたい決まり
学習塾は、期間が2か月を超え、金額が5万円を超える契約の場合、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たります。契約の前に概要書面、契約のあとに契約書面を渡す義務があり、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができます。
途中でやめる場合に塾が請求できる金額にも、上限があります。授業を始める前なら1万1,000円まで、始めたあとは受けた授業の分に加えて、2万円か1か月分の授業料の低いほうまでです。詳しくは消費者庁の特定商取引法ガイドで確かめてください。
07合格実績や料金の書き方で、気をつけることは?
合格実績や料金の見せ方は、景品表示法の対象です。過去には、実際より良く見せた塾に消費者庁が措置命令を出しています。
- 合格実績の水増し:2011年、ほかの塾の生徒の合格者を足して表示していた3社に措置命令。
- 料金の比べ方:2023年、1時間あたりの料金を他社より安く見せる比較表を載せていた個別指導塾に措置命令。
全国学習塾協会は、2024年7月に合格実績の自主基準を改めました。受験前6か月に在籍して30時間以上受講した生徒などを数え、体験授業や模試だけの生徒は数えないとしています。法律ではなく業界団体の自主基準ですが、書き方の目安になります。
料金は、月謝だけでなく、入会金、教材費、講習費を含めて、1年でいくらかかるかが分かるように載せると、保護者の不安を減らせます。
表示が問題になるかどうかは、内容や書き方で変わります。迷ったときは、弁護士などの専門家にご相談ください。
08よくあるご質問
Q募集を始めるのに、いちばん良い時期はいつですか?
全国の受講生数では、3〜4月が底で、5月から増え始め、夏期講習で大きく伸びます。春の新学年と、夏期講習の前の6〜7月が大きな機会です。告知は1か月ほど前から始めましょう。
Q合格実績が少ない塾は、何を伝えればいいですか?
塾長や講師の人柄、教室の雰囲気、通いやすさ、成績の伸びの見せ方など、保護者が知りたいことは合格実績だけではありません。授業の様子が伝わる写真や動画も役立ちます。
QSNSは、生徒と保護者のどちらに向けて発信すればいいですか?
契約するのは保護者なので、保護者が見て安心できる内容を中心にしましょう。勉強のコツなど、生徒が楽しめる投稿を混ぜてもよいでしょう。
Q塾の紹介動画やチラシをまとめて相談できますか?
はい。塾長の紹介や教室の様子の動画撮影から、チラシのデザイン、SNSの運用、地域を絞った広告まで相談できます。ご相談・お見積もりは無料です。
山梨では子どもの数が5年で約9%減っています。全国の受講生は3〜4月が底で、5月から増え始め、夏期講習で伸びて冬が山。春と夏期講習の前に募集の力を集めましょう。保護者が見るのは講師の人柄や教室の雰囲気、通いやすさです。チラシで知ってもらい、動画で確かめてもらい、体験授業で決めてもらう。表示と契約の決まりを守って、この流れを整えましょう。
参考:山梨県「令和8年度 学校基本調査(速報値)」/総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」(学習塾)/経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」(学習塾、2024年)/同 学習塾の長期データ(e-Stat)/山梨県教育委員会「令和9年度山梨県立高等学校入学者選抜の基本事項」/文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」/総務省「家計調査年報」(2025年、都道府県庁所在市別)/NEXER・桑原塾 塾選びに関する調査(2026年5月)(桑原塾)/消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」/消費者委員会 資料(2011年の学習塾への措置命令)/消費者庁・公正取引委員会(2023年3月2日 株式会社5コーポレーションへの措置命令)/全国学習塾協会 合格実績の自主基準(2024年7月改定)
山梨県甲斐市と東京都港区を拠点に、映像制作を軸に、SNSマーケティングと広告の事業を行っています。映像の企画・撮影・編集から、TVer広告やSNS運用まで、広告エージェンシーとして1社でまとめてお任せいただける体制です。全国24拠点・TVer広告の正規代理店ネットワーク「Ad Arch グループ」の一員です。
この記事の数字や制度は、官公庁・業界団体・各社の公式発表で確かめたものだけを載せ、出典を記事の最後に並べています。内容は公開日時点の情報です。